食中毒事件と小佐古氏辞任事件について思う
●2年前の桜花賞週だったか、レバ刺しで強烈な食中毒(カンピロバクター)に遭い、2週間倒れたことがあって、当時のブログに、診てくれた医者が「本当はレバ刺しなんて食べ方は我々からしたら全く認め難いことであり、本音を言えば法律で禁止してほしい」と言っていた・・・・と書いたことがある。
もちろん個人的には、それ以降、徹底して火の通していない肉は食べていないが、今回の食中毒事件には、やはりなあといった印象だ。食肉業界にはいろいろデリケートな問題があって、規制を作るのが日本の場合は難しい面もあるのかもしれないが、犠牲者が出てからでは遅い。何事も後手後手に回る日本の悪い面がまた出てしまった。
と同時に、店側の利潤至上主義の犠牲であることもまた忘れてはならないと思う。
●今回のこの事件についての周辺取材で、焼肉屋さんたちが「風評被害が云々」と言っているのをニュースで目にした。
確かに風評被害と言えるのかもしれないけれど、これは少し意味が違うようにも思う。現状の規定のままでは、生肉が危ないのは風評でも何でもなく事実だからだ。もちろん、焼肉自体がこれで敬遠されるのは風評被害と言えなくもないが・・・・ただ、こんな事件のあとになんとなく敬遠したくなる心理自体は別におかしいものではないし、降って湧いた災禍だと諦めるしかないのではないだろうか。
それにしても、街頭インタビューで「お店で出される生肉は安全だと信じ込んでいた」という声が圧倒的に多かったのには考えさせられた。おととし、中毒に罹る以前にも、多少の疑念は持っていたけれど、私も結局食していたわけで。
食だけでなく全てにおける「安全性」に対して、無条件に信じ込んでしまう(代金の中には安全も織り込まれていると信じて疑わない)のは、日本人の甘さである。
●地震に関係したことについては、いつまでも折に触れて書き続けていきたい。ずっと続いている自然からの警告に対して、無自覚になってはいけないと思うからだ。
月日が経てば、特に今回直接大きな被害を受けなかった地域の人たちはどうしてもガードが甘くなる。たとえば、ハイヒール(ピンヒール)で歩きづらそうにしている女性をたくさん見かけるけれど、もし大地震が来たら、その靴ではまず逃げ切れない。命は保てたとしても、その後をしのいでいく上で厳しい。服装上その類の靴を使用しなければならないのなら、スニーカーなどを荷物になっても持ち歩くべきだ。
その一方で、今、自分の住んでいるところが昔どんな地形だったのかを知るために、図書館で文書を閲覧する人が急増しているという。避けられないのなら対応する仕方をどうするか、いち早く考えておくこと。その意識が芽生えてきた証拠だろう。
その意味でも、全ての関連公共機関はデータを開示すべきである。隠しておくことがより不安を煽ることは、今回の原発事故で痛いほど分かっていたはずだし、国民もバカではない。
●東大大学院の小佐古内閣官房参与の辞任は、扱いは小さいけれどかなり大きなニュースだろう。
ただのヒューマニズムによる辞任ではなく、小沢派と管派の裏の駆け引きという話も出ているようだが、その辺はともかくとして、小佐古氏も学者であり、またかつては国策としての原子力偏重の推進的立場にあったのだから、今の基準数値を安全としている学者たちと公開討論するくらいのことをしてから辞めるべきだと思う。一方的に手のひら返しをして辞めますでは、国民は訳が分からない。
客観的な根拠を基に論を進めるのが学者の仕事なのだから、辞めるなら辞めるで最後まで理性的な立場から、自らの判断の正しさを証明すべきだったと思う。
氏の言うように本当に緊急時放射能予測ネットワークシステムの数字が隠ぺいされているのか。また、科学の先端にいる立場の人が「国際常識とヒューマニズムにのっとった施策を採るように」訴えたのはなぜなのか。それこそまさに非科学というか、科学の対極にある「目に見えないもの」を重視したわけで、それ自体には、ただ「辞める」だけでは済まされない、大きな意味があるかもしれないではないか。
で思い出したのは、かつて広瀬隆と共に、反原発の論陣を張った故・高木仁三郎のこと。彼は日本原子力事業に勤務して原発を推進してきた立場だったが、74年から反原発の立場に立ち、特に地震による原発の危険性を訴え続けてきた。彼がなぜ180度その立場を変えたのか、その理由は実に簡潔、かつ説得力のあるものだった。
「ある時、自分の力で止められないものを推進しているということは、とんでもなく恐ろしいと気付いた。それはブレーキの付いていない車を、言葉巧みにセールスしていることと同義である。」
それぞれの立場で、まだ少しずつ何かを隠しながら、この期に及んでまだ何かを利益のために守ろうとしながら、しがみついているような気がする。多大な犠牲を払いながら発せられた警告を無駄にしてはいけない。
●以前、RCのサマータイムブルースを貼り付けた時には、いくつかリアクションをもらった。
ちょうどその直後、斎藤和義がなかなかにロックなことをやってくれたようで、またRCのアルバム「カヴァーズ」も売れているとのこと。
久しぶりにまた1曲紹介したい。今度は、直接放射能がどうとか歌っているわけではないけれど、日本を覆っている何かを剥がそうとしているエレファントカシマシの名曲「ガストロンジャー」を。
『破壊されるんだよダメなものはよ』黄金のフレーズ。
http://www.youtube.com/watch?v=ASpqcKlJ8_I&feature=more_related
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