まずは、先日発売した拙著の売り上げが、夏枯れのこの時期にしては好調に推移しているようで、心より御礼を申し上げます。この時期に本を出すのは初めてなので、少し不安もあったのですが、上半期篇でいただいたご意見を参考に、読みやすさの面で少し改善したところもあり、同じ年の中の続きものながら、上半期篇より良くなっていると自負していたので安心しました。先週は書かれていた通りの結果を反映した部分もいくつかあって、役立つ時も必ず出てくると思います。発売日については出版社の事情によりご迷惑をおかけしてしまいましたが、引き続きよろしくお願い致します。
と、しおらしいことも書いたが、競馬に先立ってなぜか野球のこと。セもパも6月でシーズンが終わるなんていうことは思ってもみなかった。しかも間もなく最下位阪神、5位読売という順位で折り返すことになりそうだが、もしそうなったら、こんなことは物心ついてから記憶にない。セリーグの2大人気球団の失墜ぶりには思うところ大。
考えてみれば、今年のこの2球団には共通点が多い。まずは、両新人監督が共に就任に前向きではなかったのに、心ならずも外堀を埋められて受諾した経緯があること。特に高橋監督はかわいそうだった。
そして、共にFAと外国人選手頼みの補強を繰り返して、育成を二の次に回してきたこと。動員の大きな人気球団の宿命で、育成のためにシーズンを犠牲にすることが許されないという背景もあるのだが。
さらに、老害ОBの声が大きいこと、ファンの全体的な質が低いこと(異論は認める)。
ここからは阪神に限ったことを書くが、とにかく攻撃力不足はいかんともしがたい。去年以下になるとは想像もつかなかった。
私は野球を本格的にやった経験もないので、ここからは大選手の発言の引用を中心とするが、思い出すのはイチローと落合だ。
イチローは以前「少年野球ならともかく、プロの世界でも、やれ強く振れとか、やれ上から叩けという指導をしてくるコーチや監督がよくいるが、それは二流の指導者」と諧謔を交えて発言していた。
つまり・・・・
*強く振りすぎるとバットとボールがくっついている時間が短くなり、ミスショットが増える。
*概して、上から強く叩くと内野手真正面のゲッツー性の強いゴロしか打てない
という要旨だった。落合も似たようなことを言っていて、「ボールの軌道にバットを入れてやって、逆らわずに送り返してやるのがヒットを打つコツ」「ホームランを打つなら、ボールの芯ではなく、ボールの下半分の中心を狙うように意識するとボールが上がる」などと述べていた。
阪神の首脳陣は、「バットを強く振れ」とか「筋力を高めてスイングスピードをアップしろ」などと言っているそうで、これはイチローや落合の考えとは全く逆のことをやっているわけだ。片岡コーチはそもそも解説者時代から打撃論も何もなくて、精神論中心の人だったのでこれはどうでもいいのだが、金本監督はおそらく、身体能力はイチローや落合よりかなり上の選手だったのだろう。だからあの強引なハイスピードスイングが生みだすライナー性の打球で476本ものホームランを打てたのだと思う(詰まらせないで腕力で持っていく長打)。ホームランバッターにありがちなアーチ型の本塁打は、ほとんど打っていなかった。大打者の中ではむしろ変種の部類で、一般の選手に指導してもおそらく彼らの体力ではキャパオーバーになってしまったり、理解の共通項が極端に乏しくなったりしているのかもしれない。だとすれば、有能な打撃コーチを招聘しないと、若い選手の打撃スキルを上げるのはなかなか厳しいのではないか。
それと、長年にわたるスカウトの好みの弊害も出てきている。故・中村GM(監督)が小兵の内野手だったから、そういう指向が強く出ていたのかもしれないが、この20年近く、阪神は野手を取る場合、俊足巧打タイプの打者を取り続けてきた。当然小柄、細身が多くなり、結果、自前の大砲が育たず、そこをFAで補わざるを得ないという構図が固まってしまった。せっかくFAで大砲を取ったにしても、FAになるくらいだから年齢はいっているわけで、活躍時期は短くなる。その繰り返しで、外部選手の獲得の当たり外れに成績が左右される時期が続き、経年劣化に伴い負のスパイラルに入る。その歪みが一気に出たのが今年なのだろう。
超改革のために掘り起こすべき根はかなり深いとみる。コーチの更迭はもちろん、スカウトの見直し、練習の質の向上(毎年のように阪神のキャンプは酷評される)、選手をチヤホヤしすぎる風土の改善、本社の姿勢など、数え上げれば切りがない。
もともと3年で優勝できるチーム作りを標榜していた金本監督だけに、どんなプランを今後描いていくのか、今はそれを楽しみにするしか、見る材料がない。さしあたっては鳥谷のスタメン外しと、原口のファーストコンバート。このカードをいつ切ってくるか。チームの得点力が上がれば、投手の心理にも余裕ができ、ピッチングの幅も広がる。打撃が上向けば、走力以外はすべて後からついて来るものだろう。