1年間低迷した阪神タイガースの、悲劇のトドメは金本監督電撃辞任という衝撃的なニュースだった。
長らく阪神について口をつぐんできたが、シーズン終了直前の今、今年の惨状についてやっとまとめる気になったので書くことにする。興味のない方はごめんなさい。飛ばしてください。
あまりにも書くべきことが多くまとまらないので、思いついたままに断続的に書いていく。
まず、采配や能力以前に、最下位に落ちたことについては、運が無さすぎたのも確か。1つは信じられないほどの主力のケガ人続出。初夏の上本はまだ時期が早い分立て直しもできたが、肝心の夏後半以降に、北條、原口、糸井、秋山、メッセンジャー、藤川と投打の柱となっている選手たちが続々ケガでリタイアした。これではどうにもならない。
もう1つ、追い打ちをかけたのが天災や異常気象による中止順延のあおりをモロに喰らったことである。投手ローテ、体のメンテもかなり狂った。綱引きで負ける時のように、ズルズルと全体が引きずられて総崩れになっているあの態勢と同じだ。
だからといって、自分から「運がなかった、あれがなければ少なくとも最下位はなかった」と言えないのが将のツライところ。個人的には来年までは指揮を取るべきと思っていたが、必要以上に崩壊した印象を与えてしまったのは痛かったし、そこをきちんと見るほど、世の大半の阪神ファンは成熟していない。本庶さんの「指揮官を変えるべき」発言がかなり効いた。
金本が就任した時、落合との対談で「5年は掛かる。5年務めるまでは絶対に辞めるな。辞めたらこのチームは変わらない」と落合が金本に珍しく熱く語っていたが、図らずも予言のようになり、悪い形で的中してしまった。
もちろん、運についてはシーズン末期の惨状だけで、そこまでの低迷には結構根深い理由がある。
◆まずスカウトが長年機能していない。その最大の問題は、甲子園は広いから守備力重視という、実は誤った定説に囚われて、一時期の数年間、小兵の巧者タイプばかり取ってきた点にある。
この球団のおかしいところは、走力を見直すと言えば、走力に特化した選手ばかりを取り、守備強化といえば、守備のスペシャリストタイプの選手ばかりを取るという、小兵好みの偏った戦略をとってきたことだ。チーム構成のバランスがとにかく悪い。それが中堅の欠落につながり、ベテランに異常な負荷をかけ、若手に無理な促成をしいることになっている。
そもそも走るためには塁に出なければいけないし、野球は点を取らないと勝てない。
◆また、会社がブランドに弱い。オフに外国人を取る時は、実績重視で、メジャー何発とか何安打とかそうした数字が大好きだ。ドラフトでも大卒ブランドに偏りすぎ。
◆甲子園は両翼が広いから守備重視というけれど、これこそが阪神を長年低迷させている勘違いだ。もちろん守備は大事だけど、選手の守備範囲というものは、それほど大差ないし限界がある。だから広い球場はヒットゾーンが広いと見た方がよく、攻撃力に比重を置くべきなのだ(反対に東京ドームのようなところでは、投手はホームランだけに気を付け、外野手はカバーできるエリアのシェアが多くなるから、守備力を重視したラインナップを組むのがよい)。
さらに甲子園は広いようでいて、ポールに向かって急激に狭くなっていく上に、バックスクリーンも実は近い。だから主軸には右打者も左打者も引っ張れるタイプ、あるいはセンター方向へ大きくフライが打てるタイプを養成すると、甲子園での長打が期待できる打者が出てくるはず(その意味でセンターへ大きいのが打てる陽川は期待が持てるし、引っ張った時の打球が伸びる大山も来年はさらに楽しみだ)。
◆まだまだあるぞ。次はもっと細かくベンチ采配の問題だ。
あまりにも左右病が酷い。左投手に左打者を不利と考えすぎて、せっかく前日に固め打ちして波に乗っていた左打者を、翌日の先発が左投手というだけでアッサリベンチに下げてしまう。これではせっかくのチームの勢いに水を差してしまう。
さらに、片岡コーチを中心とした右打者への悪名高き右方向ゴロ進塁打指導。球を極力引き付けて打つようにいじられたことで、大山、中谷などがミートポイントを見失い、持ち味を大きく削がれてしまった。大山や梅野は、後半になって、球を前で捌くようになったら途端に復活したのだから・・・実にもったいない。
さらに右ならソコソコパンチのあった植田をスイッチヒッターにさせたことで、かわいそうに左右ともに打てなくなった。ゴロ打ちで足を活かした内野安打製造を目指したのだろうが、きちんと振り切らないと塁には出られない。これも左右病の弊害だ。
そして、チームに打力がないとみるや、途端にバントバントで手堅い手を打ちだし、またそのバントが梅野以外下手で失敗するシーンが目立った。そもそも送りバントは、相手に自動アウトを1つ与えるデメリットがある作戦であり、成功したとしてもその後ろの打者に責任を被せてしまうことにもなり、意外と局面を選ぶ手だと思うのだ。だから満塁でも最低限の点数しかとれないことが多すぎた。で、相手投手が三流だとバカみたいに打って15点とか20点とか取ってしまう。負ける時は小差で決め手不足を露呈。昔のパリーグの下位球団によく見られた点の取り方だ。
そもそも、金本監督が天才タイプで、それでいて自分が努力でのし上がってきたと謙虚に信じているから、自分がやってきたこと、できたことは他の選手も努力でできると思っていたふしがある。きわめて特殊な成功体験なのに、それを若手に求めすぎた。
◆さらに、これは悪しき伝統だが、球団、電鉄内の派閥人事が優先されて、真にチームやファンのことを第一に考えない社風が長かった。そしてその結果、いかにも無能なコーチやスタッフが飼われてごくつぶしをしていることもあった。今年もまさかの盗撮犯罪者に堕した山脇スコアラーなどがその例だ。球団運営サイドが変わらないと、本質的な改革は完成しない。
後任人事については、針を戻すのは良くないと思うので、新しい人材を監督にしてほしい。育成を身近に行ってきた矢野が一番ふさわしいと思う。
まだまだ書きたいことはあるが、いい加減疲れてきたのでこれくらいにしておく。ただ、読売もそうだが、伝統的な2大球団のこの凋落ぶりは、共に伝統への固執、硬直化した球団運営など、ダイナソー化して滅びる寸前になっているということなのかもしれない。