◆とにかく間抜けな予想になってしまった。
少し長くなるが以下をご覧いただきたい。
「土曜の中山を見ると、おととしくらいの時計が出る芝に回復、またややイン有利で、差すにしても内捌きが必要だ。レシステンシアやダノンスマッシュは高速決着、高速ペースになった場合に足元をすくわれる可能性がある。
軸は出遅れないことを前提に11番ジャンダルム。スタートが全てで出遅れたら終わり、ちゃんと出て春雷Sの競馬ができれば十分勝ち負けになる。持ったまま追走で自ら長く脚を使っての好位差しは、明日の展開にピッタリだ。母ビリーヴは新潟のスプリンターズSを勝っただけでなく中山施行でも2着、阪神のセントウルSでも1,2着があり、坂は問題なしで野芝が大得意。」
これはいうまでもなく去年、私が配信したスプリンターズSの予想文。結果はあっさりスタート(というかスタート直後)で終わり、この手の馬の難しさを痛感させられた。さらにジャンダルムは今年当然加齢して7歳に。1分7秒前後必至の今年は、過去10年で8秒台しか圏内に入ってこない7歳以上ということもあり自信の無印に。
結果はご存じの通り。まさか時計があそこまで遅くなるとは夢にも思わず。とくに後半3Fの時計の掛かり方が異常だった。高齢馬が勝ち、持ち時計に難のある内枠の前付けできる馬が2着、上がりが掛かったことで追い込み一手のナランフレグも、内を捌いて何とか間に合った。以前ツイッターで危惧した通りの「枠ゲー」、これは予測できたのだけど・・・。
そしてメイケイエールである。見かけの馬体は見事だったし、イレコミもパドックでは見せなかったが、本馬場後は少し危うかったとのこと。それでも出遅れなかったが、スタート後の加速のノリが悪く、何とかついて行かせた感じ。さすがの力で前半に好位は取れたが、常にねっちりはっちりだったため、直線はガス欠のように下がる一方になってしまった。
まずは騎手も挙げていたように、主流路線のセントウルSからとはいえ、このクセ馬にとっては中2週がキツかったのでは、ということ。特に超絶レコードのあとでもあった。それも大きいとは思うが、私が何度かレースを見て感じたのは、右回り云々ではなく「中山が苦手」なのでは?ということだ。
去年は池添騎手の初騎乗でもあったので、前半敢えて手探りで乗っていたと思っていたのだけど、それだけではなさそう。というのも、中京でのスタート後の加速のつけ方とあまりに違うからだ。スタート後は直線に近い部分なので右回り左回りは関係ない。
ではなにかというと、スタート後150mくらいは緩い登りのあと急激に下っていく中京1200mと違い、中山1200mはそもそも下り坂の途中にスタート地点があるという設定。下り坂の中を加速し降り切ったところから、一気にゴール前の坂を上がるという形状。つまり、下り坂でのスタートをこのクセ馬は気にするのではないか・・・ということだ。人間でも下り坂でのスタートを切ることを想定してみれば、なんとなく分かるような気がする。
考えてみれば、平坦適性とか坂適性は毎週のように考えるけれど、「下り坂適性」というものはあまり考えたことがない(私が抜けてるだけかも)。スタートでリズムに乗れないとか、気を遣ってしまうとかすると、難しい馬の場合はレース全体を投げるようなことがあるのかもしれない。もちろんこんなことは仮説であり、馬に聞いてみないと分からないのだけど、競馬は仮説の積み重ねと検証(もできない。検証めいたことはできるが)なので、そこはご容赦願いたい。
ナムラクレアに本命を打った方はさらに落胆されているだろう。たぶんあれはメイケイをマークしていった乗り方。しかし裏目に出て、そのためにインへ入るチャンスを失くし大外回し。小差まで詰めたが大有利の内を通った馬の前には及ばなかった。前走で詰まりまくって負けたため、それよりは外を選んだのだろうが・・・。ただこの選択はもちろん結果論で、プラスに出る可能性もあったわけだ。浜中騎手には非はない。
それにしても、わずか4週の開催なのにコース設定を替えるのは、本当にやめてほしいとJRAに対し切に願う。
◆そして凱旋門賞。雨ももちろん大きく影響したし、当然ながら現地の馬場やコースへの適性が大きく結果を左右した。それでも去年よりは2秒近くは速かったので、言われているほど異様な道悪だったわけではない。ナカヤマフェスタが2着したワークフォースの年と同じくらいだ。ただ中山の2倍の高低差を道中でこなした上でのこの雨と、日本にはない質の芝を考えると、良馬場でやる以上に相当タフな舞台になったということだろう。近年ならバンデ、現役ではハヤヤッコ、あるいはステラヴェローチェあたりがむしろ良い競馬をするのかもしれない。
「そういう馬場でやる確率が高いレースなのですよ」という現実を認識するだけでよく、日本馬通用しない、弱いなどの悲観論はナンセンス。田原成貴さんやアンカツさんは「そもそも別の競馬」といい、安田調教師は東スポチャンネルの動画で「日本と現地の温度差」を指摘されているが、本当にその通りで「世界最高レースだから日本最強クラスを」と考えてしまうと、必然的に合わない馬を送り続けることにつながる。
もちろんその中にはエルコンドルパサー、ディープインパクト、オルフェーヴルやナカヤマフェスタのように結果と適性が重なるパターンもあるが、例えば今年のドウデュースのように、重ならないケースの方が多くなるには必定で、日本の競馬を今の馬場で続けていく限りは、失礼な表現となるのを承知で書くが「空振り」が増えてしまうのは仕方ないと思うのだ。もちろん適性だけで片づけるのも間違いなのだけど、日本側の凱旋門賞に対する意識も変わる必要があって、そちらの方が近道になり得るのでは?とも思う。
まあ、私はホースマンではないので、日本馬が勝つことを悲願とは全く捉えていない。成績が悪いより良い方がいいくらいで、ツイッターにも書いたけれど、純粋に日本のレースと同じように楽しみたいというだけである。
もちろん、日本陣営の挑戦する姿勢には拍手を贈るし、無事に帰ってきて、次の目標へ進んでいくことを願うのみである。妙な切り取りをされるのも嫌なので、敢えて最後に付け加えておく。
その他のことは次回で。